のりログ

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米国映画『ターミナル』を観たので感想

NHK BSで先日放送されていました。

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良い映画でした。ずっと観てみたかったから、偶然にも最初から観られて嬉しかった。

 

コミカルとシリアスの匙加減の妙味

いちいち導入が、最初から最後まで上手い。

基本的には祖国へ戻れなくなった人間の悲劇が描かれているのですが、ところどころ(むしろテンコ盛り?)ソフトにスッと挿入されるコミカルなシーンがしっかり面白い。

また、様々な困難をひとつずつクリアしながら、徐々にJFK空港内の特異な住人としてのアイデンティティーを確立していく主人公「ビクター」の姿はポジティブで、観ているとこちらが励まされる気分になる。

(実際にこんな上手いこと物事が運ぶわけはないとか、そんなんはどうでもいいんです。実話が元とは言えフィクションだもの)

 

あらゆる場面が紐づきあい、取りこぼしなく物語が進みます。

よく出来た織物の織り目を、眺めているみたいな気分になる映画でした。

  

改めてトム・ハンクスの演技に感服

この俳優さんが凄いのは知ってたけど…改めて凄い人やなぁってシミジミ思った。

 

まるで英語ネイティヴじゃない 

クラコウジア国という小国(実在しません)の出身という設定の主人公で、ロシア人との会話を難なくこなすシーンからロシア語に近い母語なのかと推察できるのですが、ネットで調べると、どうやらブルガリア語よりの言葉を発しているらしい。

そもそも、クラコウジア語は全てトムのアドリブらしい。

 

はい?あれ全部、アドリブ????

すごいレベルの高い中川家のネタみたいなもんですか????

とっとっとっトムすごー!

 

中盤以降、英語を習得していく主人公ビクターの発音も、私にはとてもじゃないけど英語ネイティヴのものには聞こえませんでした。

いやー。トムすごーい。

 

ビクターの瞳の美しさ

母語のクラコウジア語を理解できる人がJFK空港にいないので、ビクターの発するクラコウジア語は決して翻訳されません。

また、ビクターの発する英語も、ある程度の上達を見せるとはいえ外国語なのでどうしてもたどたどしい。

 

そこで何よりもビクターの心情を語るものは、そのお目目です。

たぶん映画製作陣も、トムの目の表情にちゃんとフォーカスして撮ったんだろうな、編集したんだろうなと想像しました。

綺麗に写されてるんですよねぇ。おっちゃんなんだけど少年のような、子犬のような瞳。

 

この映画の粗筋は忘れても、あの哀愁あふれるお目目は、たぶん忘れないと思うなぁ。

 

語るボディ

中肉中背の愛くるしい(?)ころりんボディをタオルに包み、JFK空港にて寝起きするビクターが空港内のトイレで水浴びしたり髭剃りしたりする場面が特にもう。

かわいい。

ビクターの人の好さそうな感じ、無害そうな感じ、そんな人柄を想起する見た目です。

 

語るボディ、というのは以下の映画の公式パンフレットに主演のケイト・ウィンスレットを評する言葉として映画ライターさんが用いられていた言葉で、

 

いやぁなんとまぁ、美しボディなビジュアルポスターでしょう。彫刻が2体?

相手役の男性は『オペラ座の怪人』(2004年)でラウル役をされたパトリック・ウィルソンという方。

公開当初、映画館の大スクリーンでケイトのまさに「語るボディ」に圧倒されて、ポカーン('◇')となったのが懐かしい。

 

語ってる内容は大きく異なるものの(笑)

トム・ハンクスの立ち振る舞いを観ていて、「語るボディ」と評されたケイト・ウィンスレットを思い出したのでした。

ちなみにこの「リトル・チルドレン」という映画でケイトはアカデミー主演女優賞を受賞されています。

大人向けの、含蓄が深い映画でとってもオススメです。

最後まで観ると、タイトルの重みがじわっと効いてくる。

 

しかし、良い俳優は全身で物語を語るんだなぁ。すごいなぁ。

 

麗しのキャサリン・ゼタ・ジョーンズに見惚れる

きっっっっれぇな人やなもう!!

この方が画面に現れる度にもう!「きれー!きれー!!きれー!!!」と叫ばずにはおれなかった。

(映像観賞中にウルサイ関西人の典型)

若くてショートボブでピンヒールでフライトアテンダントのキャサリンが、「ナポレオンの出てくる歴史小説が一番好きなの。」って言うたら、ビクターじゃなくてもナポレオンについて書かれた本熟読するっちゅーねん。

 

なんなんやろ。この方のお綺麗さは。ゴージャス過ぎて、ゴージャス過ぎて、ひれ伏したい気持ちになってしまう。女王様っぽいってことかな。

 

実は39歳という設定のヒロインで、ビクターも「うそ!?」って驚いてたけど。

大丈夫、私もすっごい驚いたよ。

当時キャサリン本人は35歳ぐらいだと推察されます。

いやいやいやいや綺麗が過ぎるやろ。キャサリンの居るとこだけ地球の重力弱めとかそんなチート起こってない?(ない)

 

ヴィランが巧いスタンリー・トゥッチ

実は今回初めてお名前を調べた。名ヴィランだと巷で評されてらっしゃるのをこれまで聞いたことはないのだけど、私はこの方の演じられる悪役が本当に印象的で、どの作品で観ても心象にがっつり爪痕を残される。

ラブリー・ボーン」の殺人鬼役はもうあまりに憎らしく

 

 

ハンガー・ゲーム」の大統領役…だったっけ。あ、違ったゲーム司会者。

これも小憎たらしい。

 

有名なところだと「プラダを着た悪魔」「バーレスク」でしょうか。

「キングス・マン」の最新作にも出演予定だそうで…おぉぉぉ俄然たのしみ。

 

アメリカの玄関口で巻き起こる人間群像劇

ただでさえドラマチックな巨大空港の税関で、人種の坩堝、サラダボウルの体を成す人々が様々な誤解や悶着を乗り越えて"One for all! All for one!"みたいになってくのは極めてファンタジーな話だと分かっていても、つい羨望の念をもって眺めてしまいます。

 

みんなこんな風に思いやり合えたらいいのにねぇ…と。

まぁ、やっぱりこんだけファンタジーな話を納まりよくまとめあげるのが、やはり制作側の匠の技だってことなんでしょうねぇ。

ところで「極めてファンタジー」って英訳したらまさかFinal Fantasy!?

 

人種間の軋轢が実際に社会問題になりがちなアメリカだからこそ、娯楽ファンタジーとして成立する…のかもとか、知らんけど。

 

もしも自分が無国籍に、と考えると震える

怖すぎて怖すぎて震える。

自分がどこの誰かを証明するものって、案外けっこう危うい。

身分証明証がただの紙切れ同然になってしまった時、自分ならどうする?と思いながら映画を観ていると、ビクターが哀れで堪らず何度も感涙しました。

パスポートも、これ本当に通用する?って時々不安になる。海外旅行中だいたい携行してるけど。

 

昔テレビで見た、身ぐるみ剥がされて滑落死した不憫な女性が、腰に入れてた刺青が身分証明に繋がる糸口になり母国の家族の元に帰った…っていう嘘か真か分からん話が思い出された。

 

海外に行ったときの、現地に居場所のないフワフワした感じが楽しいんだけど、それは家に帰れるという確信があるから楽しめるわけで。

 

終幕、ビクターが帰路に着く際にタクシー運転手に行先を尋ねられる場面で

「家に帰るんだ」

と彼が発する心中を思うと、帰ることができる有難みが分かる。

そんな映画でした。

 

以上です。